東京高等裁判所 昭和30年(ネ)894号 判決
実用新案登録第四〇二八四八号「折畳式アンテナ」が、昭和二十六年十月十六日考案者東京都中央区日本橋室町一丁目十八番地日本発明プール株式会社内被控訴人名義で出願され、昭和二十八年二月十九日出願公告があり、次で同年五月二十六日被控訴人の名義に登録されたこと及び控訴人が昭和二十八年七月二日被控訴人の名義及び印章を使用して、同年六月三十日付譲渡による控訴人のため、右実用新案権取得の登録を経たことは、当事者間に争がない。
そして右六月三十日付被控訴人控訴人間の譲渡契約について被控訴人が当時全然関与しなかつたことは、弁論の全趣旨に徴し明白であるが、控訴人はこの点について、本件実用新案は、元来控訴人の考案にかゝるものであつて、これを被控訴人名義としたのは、日本発明プール株式会社の社長である被控訴人の社会的の地位名声を利用しようとしたものに過ぎなかつた。従つてこれが出願手続はもとより、名義変更等の行為について、被控訴人は控訴人が被控訴人の印章を使用し、その名義を以て一切の手続をすることを包括的に許容していた。本件の名義の変更もこの権限に基いてなしたものであるから、被控訴人はあらかじめこれを承諾していたものであると主張し、原審における証人森常太郎、原審及び当審における証人谷本利千代及び控訴人は、いずれも右控訴人の主張と一致するような供述をしているが、右各供述は、後に認定する昭和二十八年八月の日本発明プール株式会社重役会の経緯並びに原審及び当審における被控訴人の各供述と対比し、未だ必ずしもこれを全面的に措信し、被控訴人を考案者として出願し、被控訴人名義で登録された本件実用新案権について、その考案者は反証のない限り、公簿上に記載された被控訴人であるとの推定を覆えさしめるには足りないし、また控訴人主張のように被控訴人が控訴人に対し、本件実用新案権を控訴人名義に変更することをあらかじめ承諾し、または控訴人に対しこれが名義変更等一切の権限を包括的に許容していたとの事実認定の資料とすることはできない。
次でその成立に争のない甲第三号証の一、二、原審及び当審における証人谷本利千代及び被控訴人の各供述並びにこれによつて真正に成立したと認める甲第四号証の一、二、三、甲第五号証の一、二を総合すれば、日本発明プール株式会社においては、昭和二十八年八月手形の不渡等の事件に端を発し、その機構を改めることゝなり、同月同会社取締役会は、当時同会社の常勤取締役であつた控訴人外一名の常勤を解くことゝなつたが控訴人が創業以来同会社につくした労苦を斟酌し、解任に伴う慰労の方法として、当時たまたま控訴人が被控訴人に無断でその名義を変更し、控訴人と被控訴人との間に紛争を生じていた本件実用新案権を、そのまゝ被控訴人から控訴人に譲渡せしめようとして、同会社取締役訴外谷本利千代等において、極力これが斡旋につとめたが、遂に被控訴人の承諾を得ることができず、これが実現をみなかつたことが認められ、前に掲げた証人森常太郎、谷本利千代及び控訴人の各供述中、右認定に反する部分は、当裁判所はこれを採用することができない。
その他控訴人がたとえ本件実用新案権の名義書換を善意を以てなしたとしても、結局前記実用新案権の取得について、適法な権限を有したとの事実は、これを認めるに足りる証拠はないから、控訴人は被控訴人に対し、右実用新案権取得の登録について、抹消登録の手続をなすべき義務があるものといわなければならない。
以上の理由により、被控訴人の請求を認容した原判決は相当である。